8月25日、長野県塩尻市で開催された塩尻ロマン大学市民公開講座のトークショーへ行ってきました。
電車を降りると目に入る駅ホームの葡萄棚、駅を出るとブドウ狩りの看板、お昼を食べに入ったお蕎麦屋さんでは食前酒に白ワインと、到着するなりブドウ尽くしの塩尻でした。 今回、中野友加里選手のトークショーの会場となった塩尻市文化会館レザンホールの「レザン」もフランス語のraisin(「葡萄の実」の意)にちなんだもの。市役所のすぐ隣に位置していて、塩尻の四季を光ファイバーで描き出す緞帳がご自慢のきれいなホールです。 会場前の立て看板には次のように書かれていました。 塩尻ロマン大学・市民公開講座 コーラスグループの合唱、中野選手のお父さまの家庭教師をされていたという宮嶌成寿学長の挨拶を経て、司会の方に先に呼ばれて登場したのは中野友加里選手。続いて進行役の永田アナウンサー(テレビ松本)が舞台に上がります。ここで永田アナが場の雰囲気を盛り上げるために仕切りなおしを提案、中野選手に一旦、袖に戻ってもらって会場からの「友加里ちゃーん」コールで再登場。 最初のトークは自己紹介がてらに、江南から家族と車で来たこと、塩尻へは初めて来たこと、身長は実は153センチぐらいなんだけれども公称154センチと、1センチサバを読んでいること(笑)、前日は地元で一日署長を務めたことなど。昨シーズンを振り返って、「一番充実」、「とてもラッキー」で「プラスになった」という中野選手、躍進の理由は基礎からの練習の積み重ねと運のおかげ、という自己分析でした。 これまでの「歩んできた道」を振り返るにあたって、永田アナより25日が中野選手の誕生日であることが紹介され、3本のろうそくを立てたケーキが登場。「(3本というのは私の)精神年齢ですか?」と冗談を言いながら、会場の「ハッピー・バースデー、ディア、友加里ちゃーん♪」の歌とともに、中野選手がろうそくの火を吹き消す場面もありました。ファンとしてはこういう形でお祝いすることができてよかったですし、講演のあいだ、もし一言も誕生日についてふれられないようだったら、フロアから「お誕生日おめでとう!」と声かけをするつもりだったので(笑)、関係者の方のお心遣いに感謝しました。 その後はアルバムから選んだ写真を見ながらのトーク。赤ちゃんの頃から始まって、家族の話(お兄さまは9つ、お姉さまは6つ年上)から、子どもの頃にやっていた習い事(ピアノ、バレエ、ダンス、バトントワリング)、運動会や学芸会、文化祭、修学旅行、最近の試合やアイスショーでの写真など計45枚と盛りだくさん。御本人が「掃除機みたい(笑)」とコメントされている「1ねん なかのゆかり」画伯がのびのび描いた象の絵もありました。途中、永田アナの呼びかけで中野選手のお父さまからのご挨拶もあり、「活発な子で負けん気が強かった」という、父の眼から見た中野選手の子ども時代の様子をうかがうことができました。 3歳で初めて靴をはいて、6歳から本格的に始めたスケートのこと、リンクの上でおどけたり、ポーズをとってみせたりしている幼い頃の中野選手。「男の子みたい」なショートカットだった髪が伸びてくる頃には「厳しい先生だけれども自分には優しかった」という山田満知子コーチや、恩田美栄選手との写真が登場します。「一番憧れている」という伊藤みどりさんとのサイン入りの写真もあり、みどりさんがテレビに出演する際にそのすぐ後ろをよく滑っていたため、ちらちらとテレビに映っていた、というエピソードも披露されました。 椙山女学園での学校生活は、スケートの朝練のために遅刻ばかりしていて怒られていたという小学校時代の話(選手の名誉のために補足しておくと、中学校以降は遅刻したことがないそうです(笑))、行くことができなかった修学旅行でクラスメイトが買ってきてくれたカステラの話、出られなかった成人式でみんなが書いてくれた寄せ書きの話なども聞くことができました。(Ask Yukari (6) 学生生活も参照) スライドを使ってのトークの後は、日頃の練習について。普段は月曜から土曜まで、朝6時からリンクの上で1日あたり3時間ぐらいの練習をこなすという中野選手、体力的に無理をしすぎない3時間という練習時間で、本番を意識し、集中して練習を行なうというお話でした。夜は10時半には寝るように心がけているそうで、睡眠不足は疲労やけがの原因になりやすいため、特に気をつけているとのこと。早起きが得意なのかと思っていたのですが、やっぱり朝は「すごく眠い」という正直なコメント。それでも眠気に負けずに練習に向かっているそうです。 次に、地方大会から全日本までの競技会の流れや、ジャンプ、スピン、スパイラル、ステップの種類、新採点方式への移行についておおまかな説明がありました(スライドで実際の演技の写真と一緒に見られたら、フィギュアスケートになじみのない方にもよりわかりやすかったかもしれません)。ここではトリプルアクセルやドーナツスピンといった中野選手について語るには欠かせない要素についてふれられていましたが、スパイラルの説明で、顔は笑っているけれども実は苦しい、というようなコメントをされていて、苦しくてもそれを顔に出さずに、にこやかに微笑んでいなければならないこの競技の大変さを再確認しました。 続いて、ステージに昨シーズンのフリーで実際に中野選手が着ていた衣装と、おなじみの金のブレードのスケートシューズが登場しました。うやうやしく白い手袋を取り出してはめている永田アナがよかったです。衣装は「ピンクや白が好き」で、「軽い素材」、「腕を見せないよう長袖」というのが選手のこだわりとのこと。エキシビションの『アメージンググレース』は「音楽も衣装もお気に入り」のプログラムだったそうです。靴は「年に一足」のペースで変えていて、メーカーは大阪の鈴木商店さん。 話題がスケート靴になったのを受け、永田アナが下駄スケートの実物を中野選手に披露。ブレード状のものを取り付けた下駄を目にして「本当にこれで滑れるんですか?」と中野選手が質問、永田アナや塩尻を地元とする会場の大方の皆さんの反応は、「もちろんですよ~(笑)」という感じの答えでしたが、以前、伊藤みどりさんがテレビの番組で下駄スケートをはいて滑っていらっしゃるのを見ていなかったら、これで滑れるとは思えなかったので、私も中野選手のこのような質問はもっともだと思いました(下駄スケートについては、日本はきもの博物館「疾走するはきもの スキーとスケート」展を参照。信州では諏訪湖博物館に下駄スケートの展示があるそうです)。 また、NHK杯をはじめとしたメダルや記念品もステージに登場、選手自ら一つ一つ手にとって説明がありました。昨シーズンのNHK杯は補欠で、「まさか優勝できるとは思ってなかったのでびっくりした」という中野選手、今シーズンのショート(映画『SAYURI』よりMemoirs of a Geisha)では「和」を「日本人らしく」、「私らしく」、またフリー(プロコフィエフ『シンデレラ』)ではシンデレラのストーリーを表現したいと語り、「(今季のNHK杯で)二連覇は?」という永田アナの問いに「恐れ多いです」と笑いながら、「終わったときによかったなと思える演技ができたら」と答えていました。 さらに、カナダ、カルガリーで今年の3月に行なわれた世界選手権はやはり「違った」そうで、「もう一回滑りたいと思った」とのこと。枠は3つ、しかも年上の先輩スケーターたちと年下の伸び盛りの選手たちとの間にはさまる形になっていて大変だけれども、まずは「若さに負けないように(笑)」頑張りたいとコメント、東京ワールドへの意気込みを感じました。 個人的に印象深かったのはバンクーバーオリンピックについてのコメントで、「トリノが終わったばかりで先のことはまだわからない」と慎重に前置きしながらも、「(五輪の時期がもっと近づいたときに)目指せるな、と思ったら目指したい」、「(そのときに)行けるものなら行きたい」と話し、選手の中で4年後という目標が以前よりも形になってきているのかな、と思いました。 最後に会場との質疑応答がありました。
「私の歩んできた道」と題されたこのトークショー、選手自身、「スケート一色だった」という感想を述べていたように、中野友加里という一人の21歳の女性がこれまで「歩んできた道」においてフィギュアスケートというものが本当に大きな存在であることがよくわかりました。競技スケートを続けていく中で、例えば小学5年のスロベニアを皮切りに海外遠征に出かけるというような、他の同世代の女の子たちにはなかなかできない経験をしている一方、修学旅行や成人式といったごくあたりまえの行事に参加できない、ということもあります。「大変」で「やめたいと思ったこともある」という、その道のりは、選手本人の努力はもちろんですが、ご家族やコーチ、先生方、お友達といった、周囲の人々によって支えられてきたものでもある、ということを改めて感じました。 慣れないといいながら、はきはきと一所懸命話す中野選手の姿を拝見することができましたし、また、子ども時代の写真や、衣装、靴、メダルなどの披露もファンにとって嬉しいサービスでした。進行役の永田アナウンサーも、御本人がしばしば口にされていたように時々「おやじ」モードが入っていましたが(笑)、ファンに近い目線で質問やお話をされていて、好感がもてました。 今季のNHK杯は長野で開催ということで、塩尻ロマン大学の受講生の中にも「応援に行きます」と大会スケジュールを選手に直接確認する方もいらっしゃって、花束贈呈を受けて最後に挨拶する中野選手には会場から大きな拍手がおくられました。このようなリンクの外でのイベントも選手のファン層を広げるよい機会となるのでしょう。 講演終了後の会場ロビーでは間近で中野選手の衣装と靴を見ることができました。 関連: Go, Yukarin! 「中野友加里選手、塩尻で市民公開講座に出演」 Go, Yukarin! 「塩尻ロマン大学トークショー」 早稲田スポーツ「一日警察署長・中野が青少年に喝!」
by smile_yukari
| 2006-08-31 23:52
| イベント
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Comments(10)
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ishi-kichi at 2006-09-04 19:43
詳細なレポート、ありがとうございました。
まるで自分が聴きに行ったかのような感じに思えました^^ このような機会で多くの方々が中野選手を応援してくれると嬉しいですね。 特に今年のNHK杯は長野での開催ですし、中野選手を後押しする大きな拍手が沸き起こる事を願ってます。
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かめの
at 2006-09-04 20:34
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とても丁寧なレポートで、より一層中野友加里さんという素敵な女性を知ることができました。
きめ細やかな更新といい、管理人さんの頑張りには毎度頭がさがります。 何人のファンが感謝していることでしょう、いつもありがとうございます。 トップの浴衣姿も、本当に艶やかで・・芸能人顔負けですね。 近頃テレビなど見ていて思うのですが、中野さんほど日本人の美意識に適う女性はめったにいないのではないかと思います。
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pinazow
at 2006-09-04 20:57
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管理人様には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
会場の雰囲気が伝わってくるようなレポートありがとうございます。 インタビューなどを聞いていていつも思うのですが 友加里ちゃんは言葉の選び方がとても上手だなと。 自分の意見をしっかりハッキリ、しかもとてもキレイな言葉で ハキハキ話すので、それが老若男女を問わず 多くの方から愛される理由なのかな、なんて思っています。
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おやじ
at 2006-09-04 23:56
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この記事だけで、「中野友加里」という選手がどういう人なのかが分かりますね。大変な情報量です。管理人さまに深く感謝いたします。ゆかりんはずいぶん詳しく話して下さったのですね!
「スパイラルの説明で、顔は笑っているけれども実は苦しい、というようなコメントをされていて、苦しくてもそれを顔に出さずに、にこやかに微笑んでいなければならないこの競技の大変さを再確認しました」 管理人さまがレポートして下さらなければ、恐らく知る機会がなかったことです。フィギュアスケートと言う競技の大変さをほんの少し理解できた気がします。 仙台でのアイスショーまであと少し。ナマのゆかりんを応援できるのが今から楽しみです!
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サリー
at 2006-09-05 00:11
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とってもきめ細やかなレポート、楽しく読みました。管理人さん、ありがとうございます!!
友加里ちゃんはスケートにも、受け答えにも誠実な人柄がにじみでていますね。テキトーでいいじゃん、みたいな最近の世の中で、稀な存在で、輝いています。これからも応援し続けます!!
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でびかば
at 2006-09-05 10:24
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これを読むとゆかりんのこと全部わかったような気になりますね。ますます応援したくなりました。
塩尻まではちょっとした家族旅行だったみたいですね。楽しいドライブだったことでしょう。運転はお父様?お兄様?ま、まさかゆかりんが・・・
貴重なトークショーのレポート、ありがとうございます!ゆかりんが、自分の言葉できちんと自分自身について語っているいる様子がうかがえます。
今シーズンも、ベテランと若手に挟まれて大変だと思うけど、シーズン通して自分自身の納得のいく演技ができるよう、応援してます。
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TO
at 2006-09-06 18:16
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管理人様
貴重な愛情のこもったレポートありがとうございました(ほんとうにご苦労様でした)。 おやじさんのスパイラルのところへのコメント、私も同感です。 東京ワールドの「若さに負けないように(笑)」は、技も磨くけどジャンプでも負けないという(?)中野さんらしいコメントですね。 バンクーバーについての考え方、これまでも管理人様から紹介してもらったものばかりですが、全日本終了数日後の2006.1.1付け早稲田スポーツ、フィギュアスケートDAYS〈vol.0〉の世界選手権直後のインタビュー、2006.7.2付け早稲田スポーツから今回のコメントへと、管理人様ご指摘のとおり形になってきたと思いますが、それに加えて前向きな発言ができるだけの自信が徐々についてこられたのかなあと思っています。
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pinolike
at 2006-09-07 00:22
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管理人様、お忙しい中 UP ありがとうございます。
当日の状況が思い出せる素晴らしいレポート、さすがです。 冒頭で永田アナ(上手な進行でした)がスタイルの良さを誉めたとき、会場からは肯定を意味する大きな「どよめき」が上がっていました。 そして、最初こそ友加里さんの美しい姿に見とれながらも、しっかりとした声と意思を持って答えられる様子に、改めて友加里さんの魅力に心打たれた方々も多かったのではないでしょうか。 「美しいトップアスリート」ではなく、「トップアスリートだからこそ美しい」 当日の友加里さんには、そんな雰囲気があったように思えます。 (永田アナも、笑いを交えながらもオーラがどうの言っていた気が・・・) 最後、公演後の衣装展示で皆さんが写真を取っているのを見て、私はカメラを持ってこなかったことをちょっぴり(・・・相当)後悔しました。 この後悔は、生で友加里さんの演技を観ること、そしてこれからもこのブログで応援させていただくことによって埋めるしかなくなっちゃいました。 友加里さん、友加里さんの大切なご家族の皆さん、そして管理人さん、大変ありがとうございました。
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たけぽん
at 2006-09-08 02:02
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管理人様、素晴らしいレポートをありがとうございます!
実に詳細で、他の方のコメントにもありますが「まるで私も一緒に参加した」かのよう。心から感謝します! 司会の方を含め、スタッフサイドの念入りな準備がうかがえるトークショーだったようですね。伊藤ゆかりさんの後ろで・・・のエピソードがお気に入りです。
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