例によって例のごとく中野友加里 -centered な Dreams on Ice2008 の感想です。
パンフレットにはプロフィールとスペシャルインタビュー、その他楽屋裏ショットなどが掲載。今季のテーマとして「準備なしに自信はなし」を掲げている中野友加里選手は、プロフィールページの写真が『アリア(風)』の初期バージョン(胸元にふわふわしたのがついているもの)、スペシャルインタビューでは2005年のDOIで『アメージンググレース』を滑ったときの思い出と、今季新EX『Somewhere』について語っています。また、昨年のオフショット写真集ページ中央は黒の練習着を着た笑顔のゆかりんです。 オープニングからいつものように「踊りますよー」と気合入ってる中野友加里選手。『アメイジンググレース』で着ていた水色の衣装で登場です。男女が組になるパートがあり、南東コーナーで踊る中野選手のパートナーは小塚崇彦選手でした。中野&小塚組のちょこっと裏話はおまけでどうぞ。 第1部で羽生結弦選手が滑っていた『ムーランルージュ』の『ボレロ』は、中野選手のSPとしてゆかりんファンにはおなじみの曲です。今年のプリンスアイスワールドでもエキシビション用に仕立て直して滑っています。それとは別に作られたマリーナ振付の新EXのお披露目は、当初うかがっていたお話では、プリンスアイスワールド豊田公演までに滑りたい、ということでした。 ところが、その後に出た公式サイトのジャーナルでは、DOIぐらいまでに滑りたい、に変わっていて、各選手が新プロを用意する中、やっぱり私も! と思われたのか、予定が早まったようです。プログラムの仕上がりが間に合っていなかったら、もしかすると羽生選手と曲がかぶっていた可能性もあったかもしれません。 今回のDOI、男女の生歌があったり、ランビエール選手が振付師でフラメンコダンサーのアントニオ・ナハーロさんと二人で『ポエタ』を踊るという贅沢な反則技を繰り出してきたりと、どことなくCOI風? という演出になっていましたが、とにかくやたら濃いプログラムが続きました。 そもそも1部から、佐々木彰生選手が選曲を聞いただけで笑ってしまった『キューバンピート』、29日昼公演でスタオベした鈴木明子選手の『リベルタンゴ』などがあり、織田信成選手の滑りも久しぶりに見られましたし、2部はさらに安藤美姫選手の『ボレロ』やら、髙橋大輔選手はステップ踏みまくるわ、浅田真央選手がタンゴで踊るわ、とアクの強いプログラムばかり。 宮本賢二さん振付のプログラムが多かったことも手伝って、ショー全体のラテン系濃度が強くなった結果なのか、示し合わせでもしたのかと思ったぐらい、赤と黒が多い今回の出演スケーターの皆さん。そんな中でラテン系でも宮本プロでもない中野友加里選手も、プリンスアイスワールドで着ていた赤の衣装で登場しました(但し、手袋はなし)。何でも新EX用に作った新しい衣装の到着がDOIの翌週以降になってしまった、ということで、急遽この衣装を着ることになったのだとか。 今回のDOIで中野選手が初披露したのは、バーブラ・ストライサンドが歌う『Somewhere』。『ウエストサイドストーリー』(WSS)ではおなじみの曲です。2週間の教育実習や講演会などをはさんだ限られた準備期間でどこまで仕上がっているのか、正直少し心配していたのですが、ふたを開けてみると出演回による出来不出来の差のない、安定した演技で3日間、そのクオリティをキープしました。常々これは中野選手がもつショースケーター向きの才能だと思っています。 選手によれば「この公演中にやっと呼吸の仕方がわかってきたという感じ」だったそうでしたが、間近に見ることができた演技では、全くぶれないスピンの軸や、一蹴り一蹴りの滑りの質、イーグルや上体をそらせたイナバウアーなどを通して、プログラムを下支えするスケーティングの根幹部分の質の向上が実際に見てとれました。バレエジャンプもきれいになっています。 ミュージカル曲を使ったズエワのエキシビションプロというと『シカゴ』の『セルブロックタンゴ』がすぐに思い浮かびます。山椒は小粒でもぴりりと辛い、という印象の、帽子を使った気の利いたプログラムでしたが、今回、マリーナが持ってきたのは、ミュージカルの中でもど真ん中、古典と言っていいWSS。その中から『Somewhere』、しかもバーブラ・ストライサンド版を選んだこと自体、久しぶりに一から中野友加里選手のエキシビションを作ることになったズエワの、中野選手の立ち位置、成長に対する見方の変化を示しているように思います。 そんなことを思ったのも歌がバーブラ・ストライサンドだからで、男性グループと一緒に歌っているバージョンもありますが、中野選手が滑っているのはソロ・バージョン。選手が生まれた1985年にLAで制作、発表され、ブロードウェイ・ミュージカルの曲ばかりを集めたその名も『ザ・ブロードウェイ・アルバム(邦題:追憶のブロードウェイ)』に初めて収録された曲です。[Mark Iskowitz, The Broadway Album in The Barbra Streisand Music Guide] 対立する移民集団のはざまで引き裂かれた主人公の男女が、いつか自分たちがともに心穏やかに暮らせる日、憎しみを越えて相手を許しあえる「どこか(somewhere)」を求める歌詞を、ストライサンドは歌います。この曲のもつメッセージの普遍性について歌い手が語っているように、駆け落ちしようとする恋人同士にとっての「どこか」、祖国を離れて移民たちが向かう「どこか」、犠牲の代償としてたどりつく「どこか」、人類愛的な視点から求めるここではない「どこか」といった、この曲を聞く人ごとに、その人にとっての「どこか(somewhere)」を歌った歌として受け止めることができる、そういう曲だといいます。[Iskowitz, The Broadway Album; A Labor of Love, ibid.] 中野友加里選手はテレビのインタビューでこの曲を滑る上でのイメージについて尋ねられ、「恋するような気持ち」と答えていました。プログラムとして「まだまだ改善の余地はあります」とは選手御本人の言葉ですが、バーブラ・ストライサンドのスケールの大きさに負けない存在感をもって、中野選手が表現したい「どこか」への思いを、今季これから、このプログラムを通して見られれば、と思います。 フィナーレでは女子の先頭を切って滑り慣れたホームリンクを周回する場面もあり、周囲のお客さんを盛り上げながら踊る、頼りになるお姉さんモードが発動していました。 大忙しの中野選手のアイスショー出演はまだまだ続きます。次はフレンズオンアイスです! おまけのDOI後日談。 29日1回目のオープニングでは、昼公演ということで体が目覚めきっていない様子だった小塚崇彦選手。そのため男女で踊るパートが、なんだか友加里姉さんがリードしてるみたいでしたよ、と伝えたところ、「そんなことないですよ(笑)」というフォローが中野選手から入りました。 なんでも小塚くん、友加里ちゃんにこんなことを言ったそうで、 ちゃんと支えるから!こんなに爽やかに男前発言をされた当の御本人は、後日、伝え聞くところによると、「そんなこと言ったっけ?」とおっしゃっていたらしいのですが(苦笑)、その小塚選手が今回のDOIで披露したサンドラ・ベジック振付の新EXも、これまた爽やかにかっこいいものでした。これは海外のお客さんにも見てもらわないともったいない、と強く思います。 関連: 青嶋ひろの「ドリームオンアイス2008レポート(2)小塚崇彦・少年と青年のはざまで」(Sports@niftyフィギュアスケート特集)
by smile_yukari
| 2008-07-04 10:49
| イベント
|
Comments(3)
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ももこ
at 2008-07-05 04:13
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TVで見ました。ゆかりちゃんは赤の衣装が似合っててとてもきれいでした。ゆかりちゃんは振り付け師の人がずっとおなじなのでしょうか??まだ若いのでもっといろいろな振り付け師やコーチにお願いして・・・どん欲になってもいいような気がします。すいません何も分からない素人がなまいきいって・・・ただ10代の子でみらいちゃんやキャロライン・ザンとか強敵も出てきているので、いろいろと変化も必要な時期だと思います。
以前みたビールマンスピンもきれいでしたよ。また是非やって欲しいです。他の選手のおはこもどんどん取り入れていろいろな表情のゆかりちゃんが見たいような気がします。バレエを習っているということなのでしなやかさは十分他の選手に負けてないと思います。大学院との両立で大変だと思いますが・・お体を大切に頑張ってくださいね。応援しています。
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smile_yukari at 2008-07-05 06:56
振付師については、こちらのイベントでの質疑応答部分が選手の考えを知る材料になると思います。ここでは直接触れられていませんが、一連の流れでコーチについても同様、ということはおわかりになるかと思います。
http://goyukarin.exblog.jp/7599458/
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at 2008-07-08 23:56
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